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農園に泊まる|採ってから焼くまでが、いちばん短い旅
食材が畑から食卓まで何メートル動いたか。ふだんは考えないことだが、宿ではときどきその距離が極端に短くなる。畑で抜いて、洗って、そのまま焼く。味がどうという以前に、順番が変わる。買い出しから始まる旅は「今日は何を食べようか」から始まるが、農園の宿では「今日は何が採れるか」から始まる。決めるのが自分ではなくなる。
数えてみると、14軒
泊まり火に掲載している672軒を「農園」「果樹園」「収穫体験」で横断すると、該当したのは14軒だった。そのうち収穫体験や果物狩り、摘み取りに触れているのが9軒。全体の2%ほどで、探して見つける類の宿ではある。
ただ、この14軒は「農園のある宿」ではなく「農園が先にあって、あとから宿ができた」ところが多い。りんご園、柑橘園、オリーブ農園、きのこの原木。もともとの生業が敷地の主役で、泊まる場所はその中に置かれている。だから食事の内容も、季節も、農園の都合で決まる。
りんご園の中に、2棟だけ: 果樹園グランピングヴィラHARASAWA

群馬県みなかみ町、創業50年の「原沢りんご園」が持つ30,000㎡の果樹園に建つ、1日2組限定のグランピングヴィラ。谷川連峰を望む山間に、北欧風2階建てのフィンランドパイン製ログハウス「The Apple」(延べ床118㎡・最大6名)と、愛犬同伴可能なコテージ「Plum」(最大4名・全犬種3頭まで)の2棟だけが置かれている。
食事は果樹園の完熟りんごを使う「クレイジーアップルBBQ」。群馬のブランド牛「上州牛」やご当地ウインナーを、すりおろしりんごの自家製タレで味わう。朝食は洋朝食か、農園の健康おかゆご膳から選べる。果樹園の中には本格フィンランド式サウナがあり、りんごの香りのセルフロウリュと外気浴で過ごせる。
上越新幹線「上毛高原駅」から車で約15分、無料送迎あり(要予約)。関越道・練馬ICからは約1時間半。りんごの香りが、タレにもロウリュにも入っている宿だ。
150年の果樹園に、1日1組: 柳澤果樹園 こもれび
公式サイトよりグランピング奈良県 · 五條西吉野柳澤果樹園 こもれび最大4名 · 38,500円〜 / 泊施設ページを見る →
奈良県五條市西吉野、150年続く柳澤果樹園が営む1日1組限定の農家滞在型キャンプ&BBQ施設。賀名生梅林を正面に望む奥吉野の山あいにある。宿泊は4名分の寝具を備えたテントで、自分のテントを1階のスペースに持ち込めば追加料金なしで人数を増やせる。夜は焚き火を自由に楽しめる。
BBQ施設にはコンロ(炭付き)、冷蔵・冷凍庫、水道、電源、焚き火台(薪10本付き)がそろい、日帰りなら最大12名まで。食材と飲み物は持ち込み制だ。風呂は10mほど離れたカフェ「こもれび」2階の絶景ジャグジーを使い、バスタオルやドライヤー、アメニティも備わる。カフェでは石窯で焼く本格ピザとサイフォンで淹れるコーヒーも味わえる。料金の目安は38,500円〜/泊。
農家が営む宿は、設備が最新かどうかではなく、その土地で長く続いてきたことのほうが効いてくる。
きのこを、原木から: 芸北おうどまり 沙羅の森

広島市内から車で約60分、北広島町の山頂に2024年8月に生まれた里山ヴィレッジ。滝山川と大暮川が流れ込む「仙水湖」と、湖面に映る山々を望む。客室は山頂の「天空のドーム」3棟(朝霧・銀河・㐂春/定員2〜4名)と、木立に包まれた「コンテナハウス」1棟(定員1〜2名)で、各棟に専用の炊事棟とバス・トイレ、個別の食事スペースを備える。
敷地内には椎茸・舞茸を原木栽培するきのこ工房があり、きのこの収穫体験ができる。山野草の咲く散策路もあり、季節ごとにアクティビティが変わる。夕食は広島和牛や和豚もち豚、芸北あまごを使った里山グランピングBBQ、朝食は芸北サーモンとこだわりパンの和洋セット。チェックインは絶景のレストラン「王泊茶屋」で行う。
果物と違って、きのこは秋そのものだ。原木から出てくるところを見てから焼くと、乾物の椎茸とは別の食材だと分かる。
農場の敷地に建つ: Moiそらやま

鳥取市南部、そらやまの中腹にある果物農場「広岡農場」の敷地内に建つ全5棟のファームグランピング。プライベートガーデン付きの「ガーデンドーム」3棟(定員6名)と、約400㎡の専用ドッグランが付く「ドッグドーム」2棟(定員5名)から選べ、各棟にエアコン完備のBBQスペースとバスタブ付きの浴室がある。
トレーラーの屋上テラスからは山々の眺望と、「星取県」と呼ばれる鳥取の星空。夕食は鳥取和牛のイチボステーキを味わうプレミアムコースなどのグランピングBBQで、鳥取産米「星空舞」の食べ放題や飯盒炊爨体験もできる。焚き火台には薪1カゴ分が無料でつく。農場と連携したアクティビティやポニー牧場も近い。鳥取自動車道・鳥取南ICから約10分、JR鳥取駅からタクシーで約15分。
オリーブの丘に8棟: オリーブグランプ淡路島バージンバレー

兵庫県淡路島北部、標高200mの自社オリーブ農園に広がる全8棟のグランピング。3,500本のオリーブが立ち並ぶ甲子園球場およそ2.5個分の丘からはオーシャンビューが広がり、遮るもののない空には淡路島屈指といわれる星空も見える。客室はオーシャンビューのサウナ付きドーム、ジャグジープールテラスを備えた1組限定のデラックスドーム、プライベートドッグラン付きの愛犬同伴棟など。プライベートプールとサウナを備えた定員8名の一棟貸しヴィラも4タイプある。
食材にもオリーブが回っていて、オリーブを食べて育ったオリーブ牛やオリーブ卵が並ぶ。ピザ作りや乗馬ツアー、自家農園での収穫体験も用意されている。チェックインは15:00、チェックアウトは10:00。
農園がそのまま景色と食材と名前になっている例で、ここまで一貫していると、泊まること自体が農園の見学になる。
採ったものが、その日の献立になる
もう少し日常に近い形もある。静岡県伊東市宇佐美のメモリアコリーナ伊豆80は、相模湾を望む高台のグランピングで、施設内の農園で収穫したソラマメやズッキーニをその日の夕食で味わえる。滞在中はソフトドリンクとアルコールが飲み放題のオールインクルーシブ(提供時間あり)で、料金の目安は11,000円〜/人。子どもと行くなら、食育という言葉を使わなくても伝わるはずだ。
栃木県矢板市のラスティックキャンプは、複合施設「58ロハスクラブ」の敷地内にある10棟限定の体験型ファームグランピング。敷地内ファームの新鮮野菜と地元産の肉を盛り合わせたグランピングBBQで、自家農園での収穫体験もできる。クラブハウスには大浴場(17:00〜21:30)があり、東北道・矢板ICから車で約10分。
採れるものは、こちらでは決められない
農園の宿でひとつだけ気をつけたいのは、収穫体験は予約できても、収穫物は予約できないということだ。作物には旬があり、その年の天候で前後する。北海道の奥洞爺倶楽部は、提携する果樹園でのりんごやブルーベリーの果物狩りを「要問い合わせ」と明記している。鳥取県のGRAN LAKE TOTTORIには特産・二十世紀梨の収穫体験や朝採り卵の体験があるが、これも梨の時期あってのものだ。
だから予約のときに聞くのは、「収穫体験はできますか」ではなく「その日は何が採れそうですか」のほうがいい。答えが「今年は遅れています」でも、それはそれで旅の情報になる。畑の都合に合わせるのは不便ではなくて、季節の中に入れてもらうということだ。
よくある質問
- 収穫体験ができる宿はありますか?
- あります。泊まり火の掲載672軒を「農園」「果樹園」「収穫体験」で横断すると14軒が該当し、うち9軒が収穫体験や果物狩り、摘み取りに触れていました。群馬・みなかみのHARASAWAはりんご園の中、広島・北広島の沙羅の森は原木栽培のきのこ、兵庫・淡路島のオリーブグランプは自社オリーブ農園です。
- 収穫した野菜はその日に食べられますか?
- 施設によります。静岡・伊東のメモリアコリーナ伊豆80は、施設内の農園で収穫したソラマメやズッキーニをその日の夕食で味わえます。持ち帰りの可否や別料金の扱いは宿ごとに違うため、公式サイトで確認してください。
- 収穫体験はいつでもできますか?
- 作物と季節、その年の天候によります。北海道の奥洞爺倶楽部は、提携果樹園でのりんごやブルーベリーの果物狩りを「要問い合わせ」と明記しています。時期が限られる体験が多いので、予約のときに確認するのが確実です。