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新しい宿は、何が違うのか|開業年から見えること

· 泊まり火編集部

宿を探していると「2025年開業」「NEW OPEN」の文字によく出会う。新しさは、宿を選ぶ理由になるのだろうか。掲載データの開業年を数えてみると、思ったよりはっきりした形が出てきた。

木を多用した新しい住宅の室内
Photo: Jolene Hardy / CC0 (Wikimedia Commons)

開業年が分かるのは、68軒だけ

先に方法を書いておく。泊まり火の掲載672軒のうち、開業年を公式情報で確認できたのは68軒しかない。年別ではこうなる。

開業年 軒数
2021年以前 9軒
2022年 12軒
2023年 18軒
2024年 10軒
2025年 14軒
2026年 5軒

2022年以降が59軒で、記載のある宿の**87%**を占める。ただしこの数字を「貸切の宿の87%が2022年以降にできた」と読むのは間違いだ。新しい宿ほど開業年を掲げるからで、20年前にできた宿がわざわざ「2006年開業」と書くことは少ない。これは開業年の分布ではなく、開業年を書いている宿の分布にすぎない。

それでも分かることはある。この数年に新しくできた宿が、確実に一定数あるということと、新しさそのものが売り文句になっているということだ。

今年できた宿は、5軒

2026年の開業を明記しているのは5軒。方角も規模もばらばらで、それがそのまま今の市場の形に見える。

COCO VILLA 箱根仙石原(神奈川・1月開業) 1日1組限定の一棟貸し。定員12名(推奨8名)の3LDKで、BURROW社の卵形サウナとHUUMの電気ストーブ、焚き火、4口ガスのフルキッチンを備える。温泉はなく、サウナと火に振り切った構成だ。御殿場ICから約20分、72,000円〜/泊。

Rakuten STAY VILLA 由布院温泉(大分・2月開業) 全20室のヴィラ型宿で、全室に自家源泉の客室風呂とプライベートサウナが付く(高温サウナはセルフロウリュ可)。泉質は肌に優しいアルカリ性単純泉。Dタイプはドッグラン付きで、湯布院ICから車で約3分。50,000円〜/泊。

グランフィルリゾーツ東武(埼玉・3月開業) 東武動物公園に隣接する、日本初という「グランピング×動物園×遊園地」の複合リゾート。プライベートドッグラン付きの「シンフォニーヴィラ」と、全棟にサウナを備え夜空を天井に見立てた「アドベンチャードーム」の2種類。宿泊者限定で、飼育係の音声ガイド付きで夜の動物を見る「アドベンチャー・ナイト」もある。

琉心 RUSIN Private Pool Villa ONNA(沖縄・7月開業) 恩納村の全6棟、全室プライベートプール付き。70㎡超の客室にキッチンとBBQ設備を備え、最大8名。109,000円〜/泊。

グランパークさるびの温泉(三重・伊賀) 大山田温泉「そうぞの森さるびの」に併設したドーム型グランピング。チェックインは本館でQRコードを読み込むだけで、露天風呂には酒樽風呂や升風呂が並ぶ。忍者装束で挑むボルダリングもある。素泊まり4名利用時で12,500円〜/人。

去年できた宿から、4軒

2025年開業の14軒からも挙げておく。

桜楽 Moana 深浦(青森・4月開業) 白神山地の西麓、日本海に沈む夕日を望む1日1組限定の貸切宿。日本でも珍しい蔵サウナを備える。JR五能線「十二湖駅」から車で約3分。最大8名、56,000円〜/泊。前回の分布の話で「青森県は2軒」と書いたが、その1軒がこれだ。

BAYFRONT VILLA TAMATE(徳島・1月開業) 阿南市橘町、海を見渡す両面ガラス張りの1日1組限定ヴィラ。檜のバレルサウナと専用BBQスペース、焚き火スペースを備える。

LAKE villa CHITOSE(滋賀・8月開業) 琵琶湖畔・彦根の一棟貸切。定員12名・寝室3室で、プライベートプールと信楽焼の露天風呂。ペットは頭数制限なしで泊まれる。275,000円〜/泊。

グランピングB&V富士山河口湖(山梨・12月開業) 富士ヶ嶺の全23棟。自家源泉から引く高濃度バナジウム鉱泉の客室風呂とプライベートサウナを全棟に備え、プール付きスイートから最大20名のツインドーム、ドッグキャビンまで6種類。

木の壁のサウナ室
Photo: Basile Morin / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)

数字で見ると、新しい宿は「絞って、足す」

開業年が2024年以降の27軒と、掲載全体672軒を比べると、傾向の差が出る。

2024年以降の27軒 掲載全体
1日1組・一組限定 37% 19%
サウナ 74% 59%
プール 48% 32%
温泉 41% 35%

棟数を絞り、設備を足す。新しい宿はこの方向にはっきり寄っている。1日1組をうたう割合は全体の約2倍で、サウナ率は4軒に3軒。プールも半分近い。温泉だけは差が小さいが、これは湧くかどうかが土地で決まるからで、努力ではどうにもならない設備だ。

ここで注意がひとつ。27軒という標本はかなり小さい。しかも「開業年を書く宿」は宣伝に力を入れている宿でもあるので、設備が充実している側に偏っている可能性がある。傾向として読み、断定はしないのが正しい距離だと思う。

新しい宿の、弱いところ

新しさは利点だけではない。予約する側から見た弱点もはっきりしている。

  • 口コミが少ない。 開業半年の宿には、当然ながら滞在者の声がほとんどない。判断材料が公式情報しかない状態で決めることになる。
  • 写真が少ない。 季節ごとの写真がまだ揃っておらず、冬の様子が分からない、といったことが起きる。
  • 運用が固まっていない。 チェックインの案内、清掃の範囲、火器の扱いなど、細かいところが開業直後は変わることがある。
  • 周辺の情報が薄い。 「近くのおすすめ」を宿がまだ持っていないことがある。

逆に言えば、古い宿の強みはここの裏返しだ。何年も同じ場所で同じことをしてきた宿には、雨の日の過ごし方も、近所の店の閉まる時間も、蓄積されている。

それでも、新しい宿を選ぶ理由

そのうえで新しい宿を選ぶ理由があるとすれば、今の基準で作られていることに尽きる。断熱と空調、各棟に独立した水回り、Wi-Fi、セルフチェックイン。10年前には特別だったものが、いまは初期設計に入っている。上の数字はその結果として出てきたものだ。

新しさは、宿の良し悪しではなく設計思想の年代を示している。開業年は、その宿が何を当たり前だと思って作られたかの目印だと考えると、比べ方が少し楽になる。

よくある質問

今年できたばかりの貸切の宿はありますか?
あります。泊まり火の掲載で2026年の開業を公式に明記しているのは5軒です。箱根仙石原のCOCO VILLA(1月)、由布院のRakuten STAY VILLA(2月)、埼玉・白岡のグランフィルリゾーツ東武(3月)、沖縄・恩納村の琉心 RUSIN(7月)、三重・伊賀のグランパークさるびの温泉です。
新しい宿と古い宿では何が違いますか?
掲載データでは、2024年以降に開業した27軒は1日1組・一組限定をうたう割合が37%(全体19%)、サウナが74%(全体59%)、プールが48%(全体32%)でした。棟数を絞って設備を足す方向に寄っています。ただし27軒という小さな標本なので傾向として読んでください。
開業年はどこで分かりますか?
公式サイトの案内文やニュースリリースです。ただし記載があるのは掲載672軒のうち68軒だけで、書いていない宿が古いとは限りません。新しい宿ほど開業年を掲げる傾向があります。

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